こんな方に向けた記事です
保有している銘柄を新NISAで買い直すべきか知りたい
他の投資家が新NISAをどのように使うのか参考にしたい
今回は新NISAを有効活用するために、特定口座で保有している銘柄をどう扱うべきかについてご紹介します。
▼新NISAの概要や投資戦略はこちらの記事で紹介
関連記事:【新NISAの使い方】私の投資戦略とポートフォリオ
買い直しによるメリット・デメリット
まずは、特定口座の銘柄を新NISAで買い直すことによるメリットとデメリットを整理します。
特定口座から新NISAへの銘柄の移管手続きはできません。よって、特定口座の銘柄を新NISA口座で保有するには、一度売却して戻ってきた資金などを使い新NISA口座で新たに買い直すことになります。
この一連の買い直しで発生するメリットとデメリットは次の通りです。
- メリット:新NISAで買い直した後の利益が非課税になる
- デメリット:特定口座の銘柄を売却した時に課税される
今、含み損を抱えている銘柄は課税される利益がないので、買い直しても特に問題ないことが分かります。よって、検討すべきは含み益のある銘柄。
では次に、含み益のある銘柄はどのように扱えばよいのかを考えていきます。
買い直すかどうかの判断基準
以下の表は、パターン別に買い直すべきかどうかの判断をまとめた表です。
含み益銘柄 | 含み損銘柄 | |
---|---|---|
新NISAの年間投資枠を使い切らない人 | ①買い直す | ②買い直す |
新NISAの年間投資枠使い切る人 | ③買い直さない | ④買い直さない |
大きく分けると、新NISAの年間投資枠を使い切らない人は買い直し、使い切る人は買い直す必要がありません。
順番に解説していきます。
パターン①:新NISAの年間投資枠を使い切らない人の含み益銘柄
まずは、新NISAの生涯投資枠を使い切る予定のない方についてです。
この場合は買い直した方が有利に働きます。
ケース1:インデックス投資
(例)取得額100万円の投資信託が150万円に値上がりしていたケース
比較開始時の資産額は、特定口座は150万円、新NISAは140万円となります。新NISAの資産額が少ない理由は、特定口座の含み益50万円を利益確定したときに課税され、手元に戻る資金が減るためです。
特定口座:150万円 (含み益:50万円) | 新NISA:140万円 (含み益:0円) | |
---|---|---|
1年後 | 資産額:156万 (含み益:56万円) 売却時の手取り額:144万円 | 資産額:145万円 (含み益:5万円) 売却時の手取り額:145万円 |
3年後 | 資産額:168万円 (含み益:68万円) 売却時の手取り額:154万円 | 資産額:157万円 (含み益:17万円) 売却時の手取り額:157万円 |
10年後 | 資産額:222万円 (含み益:122万円) 売却時の手取り額:197万円 | 資産額:207万円 (含み益:67万円) 売却時の手取り額:207万円 |
資産額を見れば、課税を先送りしている特定口座のまま保有した方が良いように思えますが、売却したときに手元に戻ってくる資金は新NISAの方が多くなります。
「投資した銘柄が長期的には右肩上がりになる」という前提に立った時、年々、含み益が増えていくにつれて売却益が非課税になる新NISAのメリットが効いてきます。
ケース2:高配当株投資
(例)取得額100万円の配当目的銘柄が150万円に値上がりしていたケース
ケース1と同様に、比較開始時の資産額は特定口座が150万円、新NISAは140万円となります。
特定口座:150万円 (含み益:50万円) | 新NISA:140万円 (含み益:0円) | |
---|---|---|
1年後 | 受取配当金の額:6万円 (税引後:4万8000円) 資産額:154万8000円 | 受取配当金の額:5万6000円 (非課税) 資産額:145万6000円 |
2年後 | 受取配当金の額:6万1920円 (税引後:4万9536円) 資産額:159万7536円 | 受取配当金の額:5万8240円 (非課税) 資産額:151万4240円 |
3年後 | 受取配当金の額:6万3901円 (税引後:5万1121円) 資産額:164万8657円 | 受取配当金の額:6万569円 (非課税) 資産額:157万4809円 |
高配当株投資の場合も、手元に入ってくる配当金の額は非課税メリットのある新NISAの方が多くなりました。再投資できる金額も新NISAの方が多くなり、買い直しによって減少した資産額も徐々にその差を詰めていきます。
パターン②:新NISAの年間投資枠を使い切らない人の含み損銘柄
続いて含み損銘柄について。
この場合は、買い直しのデメリットである売却益への課税がありません。 よって新NISAで買い直すことをおすすめします。
パターン③:新NISAの年間投資枠を使い切る人の含み益銘柄
次に新NISAの年間投資枠(360万円)以上の金額を投資予定の方について見ていきます。
この方は、基本的には含み益のある銘柄を売却する必要はありません。
なぜなら、新NISAの投資可能枠を使い切った後は特定口座などで投資することになるからです。特定口座の銘柄はそのままにしておき、追加の入金分で新NISAの投資枠を埋めていくのがよいでしょう。
パターン④:新NISAの年間投資枠を使い切る人の含み損銘柄
買い直しても売却益へ課税されることはありませんが、追加投資で新NISAの年間投資枠を埋められるため、買い直す必要性が少ないでしょう。
以上、4パターンを紹介してきました。
新NISAの年間投資枠を追加投資で使い切れる人は多くないでしょうし、多くの人にとっては新NISAへ買い直すことをおすすめします。
ただ、有利なのは分かっていても、できれば含み益銘柄の税負担も避けられるのがベスト。
最後に税負担を軽減する方法を紹介します。
含み益は損益通算で相殺する
税負担を軽減する方法、それは損益通算を活用することです。
損益通算とは、1月~12月の損益を通算すること。特定口座内に含み益銘柄と含み損銘柄の両方が存在していれば、含み益銘柄の利益を、含み損銘柄で相殺することができます。
(例)特定口座で含み益30万円の銘柄と含み損20万円の銘柄がある場合
両銘柄をそれぞれ利益確定、損失確定すると
30万円-20万円=10万円
10万円分に課税される
1月~12月の損益を通算するので、払いすぎていた税金の還付は翌年になる点には注意が必要です。損益通算を目的とした売却は12月に行えば、還付までの期間を短くできます。
一見、悩みのタネである含み損銘柄ですが、保有銘柄の状況次第では有効活用することができます。
利益はうまく相殺しながら新NISAへの買い直しを進めていきましょう。
まとめ:税負担を抑えながら買い直そう
今回は特定口座で保有する銘柄を新NISAで買い直すべきかどうかについて紹介しました。
買い直しのメリット・デメリット
- メリット:新NISAで買い直した後の利益が非課税になる
- デメリット:特定口座の銘柄を売却した時に課税される
買い直しの判断基準
- 新NISAの年間投資枠を使い切らない人⇒買い直しがおすすめ
- 新NISAの年間投資枠を使い切る人⇒買い直す必要性が低い
上記の考えを踏まえつつも、実際には銘柄一つ一つに対して「保有継続、一部利益確定、損切りして別銘柄へ乗り換え」といった新NISAに振り回されない売買判断も大切です。
制度を意識しすぎて、不本意な売買をしてしまわないよう注意が必要ですね。
今回の記事が皆さまの投資戦略を考える上で参考になれば幸いです。